大分県内の鳥獣被害額が過去最少1億5千万円 22年度、防護柵や捕獲成果
大分県内で鳥獣から田畑を守る対策が成果を挙げている。昨年度の農林水産業被害額は1億5千万円で、4年連続して過去最少を更新。ピークだった1996年度から約4分の1に縮小した。各地の集落で防護柵を地道に張り巡らしたことが主な要因で、近年はイノシシやシカの捕獲頭数も都道府県別で上位に入る。専門家は「全国の中でも大分は対策の意識が浸透している」と分析している。
 「ほとんど荒らされなくなった」。臼杵市野津町八里合(はちりごう)の市非常勤職員長野和幸さん(71)はうれしそうに言う。
 自身が暮らす小屋川(しょうやがわ)集落(9戸)は水稲や無農薬野菜の栽培が盛んで、かつてはイノシシやシカに苦しんできた。2008年度に市の
補助金を使い、農地を長さ2キロにわたって囲む金網柵を張り巡らした。獣が穴を掘り侵入するのも防ぐため、柵の下はコンクリートで固めた。
 長野さんは平穏になった田畑を眺め、「放置していたら、作るのをやめる人は多かったのでは」と語った。

本年度は県内14市町で各地の集落が、計768・8キロに及ぶ防護柵を設置する計画だ。国、県の補助金計4億4300万円を活用する。県内は少なくとも過去10年間(13?22年度)で、柵の総延長が8800キロに達した。

県内でわなや銃の狩猟免許を持つ人は5347人(昨年度末時点)で、この10年間は横ばいだ。高齢化でやめる人がいる一方、ジビエブームを背景に若い世代の取得も目立つ。40代以下は1002人で、10年前の2・1倍に増えた。
 イノシシ、シカの捕獲頭数は19年度に7万4224頭で、北海道(10万5790頭)に次いで全国2番目に多かった。
 県は集落のリーダー役や県・市町村職員らを対象に、鳥獣害対策を助言するアドバイザーも育成している。08年度の導入以降、約1600人を認定した。動物の生態や追い払う方法などのノウハウを各地に広げている。

7月25日は由布市挾間町赤野の丸田集落(10戸)で養成の研修会があった。約50人が鳥獣の餌になるカキやクリの木を点検し、「必要ないなら伐採を」などと確認し合った。
 動物の行動に詳しく、研修会の講師を務めた麻布大(神奈川県相模原市)の
江口祐輔教授(54)は「自治体の職員は異動などで対策に濃淡が生まれがち。大分県内はアドバイザーの育成など継続的な取り組みが実を結んでいる」と話した。

<メモ>
 県が1983年に統計を開始して以降、県内の鳥獣被害は96年度の5億9千万円がピークだった。近年は9年連続で減少している。昨年度の産業別の被害内訳は▽農業76%▽林業19%▽水産業5%。加害獣は▽イノシシ58%▽シカ27%▽サルなどその他15%。地域別は農林業の盛んな豊肥、西部、北部地区で損害が目立った。
農林水産省のホームページによると、2021年度の大分県の被害(農作物のみ)は1億2200万円で、九州7県では最少だった。被害は全国的にも減少傾向にある。

PETLIFE24事務局2023.08.22

NEW 投稿一覧 OLD
このページのTOPへ
Copyright(c) INUKICHI-NEKOKICHI NETWORK, ALL Rights Resrved.